「ドロメキ淵のエンコ」

 徳島では主に川太郎と言うが土佐の方や山城町では「エンコ」や「エンコウ」と呼ばれていて容姿は河童に
似た妖怪。
 ドロメキ淵に住み近づく人や馬を引き込み尻児玉を抜き取ってしまう。
 「ドロメキ」や「ドーメキ」は轟くことを指すと言われる。
 滝のある地名と言う説や雪に埋もれる道の目印の木や、藩政時代に有用な木の伐採禁止令にあたる「留め木」
との説もあるがハッキリとは判っていない。

「こなき爺」

 山城に伝わる昔のコナキジジイは泣いている子供をさらいに来るお爺さんで 抱き上げても重くならない。
 また、徳島県にはオンブをねだる「オギャナキ」の話しがあり、この妖怪は子供の泣き声を上げる。
 現在一般に知られる"赤ん坊の姿をしてオギャー、オギャーと泣き抱き上げると重くなる"と言うコナキジジイの
姿や性質は現在に至るまでの間にこのオギャナキとコナキジジイの話しが合わさってできたのでは、と推測
される。

「一つ目入道」 

林道下にある蜘蛛取り淵。その淵の上に小屋をかけて住んでいた男がいた、夕飯の後居眠りをしていると
外から小さな蜘蛛が入って来て男の足に糸をつけてはまた外に出るをくり返す。男は何の気も無しに 足に付いた
糸を小屋の柱に巻き付けてそのまま寝てしまった。
そして真夜中になった頃、小屋は轟音と供に下の淵に引き込まれて行った。
男は命からがら逃げ出して淵を見るとそこには大きな一つ目入道が居たそうだ。
また、尾又峯より平野を経て伊予上山村奥の院へと通じる要所の原生林の中に時折一つ目大僧が 出没した。

「ほれのはなの山霊」

 山奥のうねに立つ木の枝に着物や草履などがかけられているが、その持ち主の人間の方がどこを探しても
見あたらない。
 村人達は恐ろしくてその周辺を通ることができないので、ほれのさきの向かいに金比羅さんを勧進して祀った。
 昔は村内はもとより阿波、伊予、讃岐の各地から参拝客があった。

「天狗、柴天狗、烏天狗」 

 昭和20年、二人の子供が山で失踪した事件があり神隠しにあった、天狗にさらわれたと言われた。二人はまだ
見つかっていない。
 天狗の庭とは天狗が居たと言われる場所で相川、柴川、上名の地域を指す。
 天狗滝は上名、仏子、天狗岳栗山。
 天狗嶽はエンマ峯続きブナの田尾から約2キロ、仏子峯との中間で栗山と尾又境の場所。そこには天狗がいたと
言う大きな嶽がある。標高960m、頂上は突出して危険で下を見るときは腹這いになり石に取り付かなければ見るこ
とが出来ない。嶽には五葉松や岩茸が生えているが取りに行くことは出来ない程の難所だ。獄蛇(たきはみ)もいる
と言われている。
 柴天狗はカッパに似ていて空を飛ぶことは出来ない。